常に、漠然と寂しかったり無性に切ないのは、僕らが有性の生物だからだ。二人が揃わないと増えることができない非連続なぼくら個体は、他の個体と繋がった時のみ連続の夢を見て満たされる。それと同時に気がついてしまう。繋がった個体は必ず離れ離れになって別の場所で死を迎えるのだと。(さらに気がつく。自分自身はいつか消滅して自分とよく似た誰かがこの世に留まるのだと)そして思い至る。僕らは死んで初めて同じ連続になること。生まれる前と同じ死という連続に浸るのだと。
例えばオルガズムの時のあの眩しい感覚、失恋した時の心臓を掴まれるような感覚。この二つはとても良く似ている。そういった感覚は他にも無数にある。直接的なところで言えば血や裂傷そのものを見た時の凍てつくような感覚。やはりこれも上の二つとよく似ている。その理由は明確だ。それは、これら感覚達の先にある正体が同じだからだ。正体は死、そのものだ。快楽も喪失も痛みも、突き詰めれば個体個体は他と混ざり合うことが出来ないという事実になる。その事実は死の輪郭をなぞる。僕らや僕らのDNAは死を経験していないが、身体を形成する細胞は『生物の死』を食すことで作られている。故に僕らは死の正体を感じているし、悲壮で悦楽な体験を通じて死そのものに触れている。触れることによって、死という連続が自分を含め例外なく全ての個体に影のように寄り添っていることを確認している。これは僕らがどれだけ性的につながったとしても決して一つの個体にはなれないということの確認でもある。儚いが、その儚さゆえに人は今を大切に生きたり他者を愛することができるのだ。僕らは生まれる前も死んだ後も同じだったし同じになる。
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